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前橋地方裁判所 昭和29年(ヨ)31号 判決

申請人 根岸勝衛 外一名

被申請人 群馬中央バス株式会社

主文

被申請人会社が昭和二十九年二月二十四日付で申請人両名に対して為した解雇の意思表示の効力はいずれもこれを停止する。

被申請人会社は申請人両名を昭和二十九年二月二十四日当時の労働条件を基準として、その従業員として処遇しなければならない。

訴訟費用は被申請人会社の負担とする。

(注、無保証)

事実

申請人両名訴訟代理人は主文と同趣旨の判決を求めると申し立て、被申請人訴訟代理人は「申請人両名の申請を却下する」との判決を求めると申し立てた。

申請人両名訴訟代理人の述べた申請の理由、これに対する被申請人会社訴訟代理人の述べた答弁及び抗弁、右抗弁に対する申請人両名訴訟代理人の答弁は、別紙「申請人の申請理由」及び「被申請人の申請理由に対する答弁」に記載した通りである。

(疎明省略)

理由

被申請人は、昭和二十八年六月十四日から同年七月十四日までのストライキに際し、組合が組合員をして被申請人会社の各営業所整備工場へ立ち入らしめたのは違法な争議行為であると主張するので、先ずこの点について判断する。証人配島照次、同畑祥一の証言及び申請人根岸勝衛、同松島秀夫、被申請人会社代表取締役岩崎半之助各本人尋問の結果を綜合すれば、右争議中に組合員が右の各施設へ立ち入つたのは、争議解決のための会社との交渉に当り組合員の意見を求める場合に処しての待機及び争議解決の際に急速な就業の目的を以て、組合員が平時勤務する営業所の配車事務室、運転手車掌の控室、車庫の一部、整備工場等を占拠し、前橋、伊勢崎の各営業所では夜間も二、三人ずつ宿泊していたこと、この組合の行つた営業所等の占拠は会社側のこれら施設に対する占有を全く奪つたものではなく、会社側係員の出入は容認し、右占拠中被申請人会社の総務部長で前橋、伊勢崎各営業所長兼任の岡芹一男、常務取締役の畑祥一等が営業所を巡回した際も、何等その立入を拒否せられることがなかつたことが疎明せられる。そうするとこれに対してその後為された会社からの退去要求に応ぜず、その意思に反して占拠が継続せられたとしても、これ等の占拠は営業所等に対する被申請人会社の占有を全く奪取したものではなく会社に対しては無抵抗に為されたものであつて、会社側のこれら営業所等に対する従前からの支配には何等の支障もなかつたことが認められるのであるから、この占拠は正当な争議行為として認容せらるべきものである。

被申請人会社が解雇の事由として主張するものに、営業用乗合自動車(バス)のエンジンスイッチのキーを争議中組合が取り外したこと及び前進座俳優の演劇、組合員の副業等を挙げておるのであるが、前記疎明方法によれば、キーはバスのエンジンスイッチ用として各車輌ごとに予備を含めて二箇のキーがあり、会社は平素その内の一箇ずつを運転担当の従業員に保管させていたところ、争議中組合は右従業員に託されていたキーを各営業所単位に一括保管したものであること、及び争議中被申請人会社は組合に対してこのキーの返還を求めたことは全然なかつたこと、演劇は前進座俳優が前橋駅乗車待合せの時間を利用し、駅附近にある前橋営業所に立ち寄つて、争議中の組合員を慰問する趣旨で約二、三十分間平常服のまま演劇したもので組合員外の観客を対象としたものではなかつたこと、副業と云うのは営業所占拠中の組合員の一部の者が、生活費に充てる目的を以て甘納豆の袋詰をしたものであることが疎明せられる。

このように車輌についても被申請人会社の支配権を組合が排他的に奪取していたものとは解せられないのであつて、仮に右の各事実が営業所等の占拠と関連するものとしても、之を以て不当な争議行為と見ることはできない。

ところで、被申請人会社は、本件解雇の事由として右の外に、争議中組合が被申請人会社の承諾を受けずに電話を使用したことをも挙げているのであるが、前記証人畑祥一の証言及び申請人根岸勝衛本人尋問の結果によれば、これらの事実については、本件解雇について組合との間に団体交渉の為された当時に於ては、申請人等の責任を問う事由とはされておらず、専ら営業所等への立入及び宿泊を不法占拠として、これについての責任を問うたものであり、組合はその正当性を主張した為め交渉は決裂するに至つたものであること、電話については、昭和二十八年九月中にその使用料金を組合で負担する旨を会社へ申し出ていることが疎明せられる。

然るに右団体交渉の際に責任追及の事由としていなかつたところの営業所占拠以外の事由も含めて本件解雇が為されたとすれば、これは被申請人会社と組合間の労働協約第十一条によつて組合と協議を必要とする事項について、協議の際は懲戒原因としていなかつた事由を以て最高限の懲戒である解雇の処置をしたことになる。而して右のような解雇についての協議約款は、解雇が労働者にとり労働関係の終了を来たす最大の待遇変更であることよりして労働組合が使用者のこれについての意思決定に幾分なりとも参与し、以て労働者の地位の確保を期するものと解せられるから、右のような協議の際に明示されなかつた事由を以てした解雇は当然右約款に違反し、申請人主張のように無効である。

又仮にこれ等の事由を除外して、前記団体交渉を経た、諸施設占拠の事由、即ち争議中に営業所等の占拠を、組合の執行委員長或は副執行委員長(争議中の闘争委員長或は副闘争委員長)として直接指導した申請人両名をその責任者として解雇したものとすれば、それは正当な争議行為をした申請人両名をその争議行為をしたことの故を以て解雇したものであつて、この解雇は無効と云わなければならない。

以上のように本件解雇はいずれの点からしても無効と解せられるにも拘らず、その有効なことを主張する被申請人会社に対して、申請人両名が右解雇の意思表示の効力の停止及び解雇当時に於ての労働条件を基準とする処遇を求める本申請はその余の主張についての判断を俟たず理由がある。なお、本件については申請人両名に対して特に保証を立てさせる必要を認めないので、無保証のまま本申請を認容することとして、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用して主文のように判決する。

(裁判官 毛利恒夫)

(別紙)

一、申請人の申請理由

被申請人は群馬県下に於て定期乗合自動車事業を営む会社で、その本社は高崎市上和田町二番地にあり、前橋市、伊勢崎市、太田市に各営業所がある。申請人等は被申請人会社の従業員を以て組織する群馬中央バス労働組合(以下組合と略記する)の組合員である。申請人根岸勝衛は昭和二十六年五月十一日の組合結成以来今日まで引き続き執行委員長であり、申請人松島秀夫は組合結成以来執行委員であり、且つ昭和二十七年一月十五日以来組織部長、同二十八年一月十二日から同年八月十七日までは副執行委員長であつた。

組合と被申請人会社とは昭和二十八年一月以降賃金値上の問題のため争議状態にあり、組合は同年六月十四日より七月十四日までストライキをしたが、群馬県地方労働委員会のあつせんにより、基準賃金は四月以降金一万円とすること、その他ダイヤ乗務員の実働時間の算定基準、貸切乗務員に対する手当、夏季手当等についての協定成立し、争議は円満に解決した。

右ストライキ中昭和二十八年六月三十日会社は組合に対して、前橋市田中町の前橋営業所、紅雲町の整備工場、伊勢崎市上町の伊勢崎営業所、高崎市弓町所在の伊勢崎営業所所属高崎分所等に組合員が出入していることについて、「会社施設を利用し、組合活動を為しつつあるは不法なる占拠であるから即時組合員は立退かれたい」旨の通告をして来た。組合としては、右の通告は組合の争議権を否認するものとしてこれに応ぜず、七月十四日迄続行し、争議は円満に解決を見たのであつた。

然るに会社は争議の円満解決後数箇月を経て突如昭和二十八年十二月十六日、昭和二十九年二月一日、同月八日、同月十一日、同月十九日の数回にわたり、争議中組合員の営業所及び整備工場への立入を違法なりとして、特に当時の闘争委員長根岸勝衛、副闘争委員長松島秀夫、書記長岡幸一の責任を追及するとして、前記三名を労働協約第八条、第十一条第五項により懲戒解雇することにつき組合に団体交渉の申入をしてきた。組合は被申請人会社の右申入を不当として解雇に反対したところ、被申請人会社は昭和二十九年二月二十四日付を以て申請人両名を労働協約第八条、第十一条により懲戒解雇する旨の通告をしてきた。

しかしながら昭和二十八年七月十四日争議解決の際に為された協定は、同日までに行われた争議に関し、相互に何らの責任を問わない趣旨において協定が成立したのであるから、本件解雇はこの協定違反の無効の解雇である。右のような協定が行われたことは、(一)協定に関する労働良識からくる社会通念、(二)協定成立の際の情況、(三)争議時の責任を問うと言いだしたのが協定成立後五箇月以上を経過した十二月十六日に初めて被申請人から持ち出されていること、などにより明白である。

仮に右の主張が理由ないとするも、本件解雇は労働協約第八条、第十一条違反の解雇である。即ち、被申請人と組合間の労働協約第八条は「解雇に関しては、組合と協議の上決定する」とあり、同第十一条の解雇のばあいも「協議の上解雇する」とくり返している。被申請人が申請人等の解雇の問題を初めて出したのは、昭和二十九年二月十九日であつて、同日の三、四十分の交渉は慎重審議をつくしたとはいえないし、本件解雇が七箇月前の事由にもとづくことを考えると、緊急を要するものとはいえない。争議時の責任を問うために、その争議の円満妥結後七箇月を過ぎて組合三役を解雇するということは、組合が反対することはわかりきつていることであるがそのような解雇については、たとえ組合が当初の日に反対し対立してしまつたとしても、さらに二回、三回と重ねてみなければ、どうでるかわからないことである。被申請人も二月十一日までの団交では必らずしも解雇しなければならぬといつた強い線を出していないのであるから解雇以外の制裁で妥結するばあいもないとはいえない。

いずれにしても、被申請人は最後の頃に猛進撃して一挙に解雇にもつていつたという感がある。かかるやり方では、協議をつくしたということはできない。

労働協約第三十一条は争議時の規定ではなく、平常時において組合大会、役員会等の組合活動のために会社の施設を借用し、または文化活動や組合会議の帰途のために車輌をその用法に従い使用料を支払つて使用するばあいの規定であつて、争議時のための規定ではない。争議時については本協約は空白であり、一般原則によることになる。そうすると申請人等の行為は第十一条列挙の懲戒事由のいずれにも該当しないといわねばならない。懲戒事由に該当しない解雇は協約違反として無効であるとともに、協議をつくさない解雇も協約違反として無効である。

更に本件解雇は労組法第七条第一号違反の無効の解雇である。申請人等は前段記載の組合役歴を有するが、申請人根岸は組合の代表者として昭和二十七年二月の整備工場閉鎖、五名の解雇反対の闘争、同年夏の賃上げ闘争、同年未手当要求の闘争、同二十八年四月の闘争、同年六、七月の本件の争議で組合員の信頼を受け、経済要求の闘争を指導し、会社に対する矢面に立ち、組合を骨拔にして会社が組合を支配するためには、根岸を解雇しなければならぬというほどに、その組合活動は会社からにくまれていた。申請人松島は組合創立以来の執行委員であり右の各争議の指導部にいて活溌な組合活動をなし、とくに組合組織の面から強力な活動をなし、会社の組合にたいする支配介入を排除して、申請人根岸と同様に会社からにくまれていた。申請外岡幸一も同様である。従つて本件解雇は申請人等の強力な組合活動を理由とする解雇であり、とくに昭和二十八年六、七月の争議行為(正当な組合活動)を理由とする解雇であり、さらにこの三役の解雇により、会社が組合を支配介入する機会をつくろうとするための解雇であるという事情も伏在しているものであつて、いずれにしても労組法第七条第一号違反の無効の解雇である。

申請人等は労働者として労働によりその生計を維持している者で、他になんの資産もなく申請人根岸は母親と妻子八人暮しで十七歳を頭に五人の子女があり、申請人松島は妻子三人暮しである。即ち解雇が無効であるにかかわらず、被解雇者として取り扱われることは、俸給生活者たる申請人等にとつて回復しえない損害を受けることとなるので、従業員としての仮の地位を認められたく、本申請に及んだ次第である。

スト期間中各営業所に立ち入つたけれども、被申請人の支配を排除する意図で占拠したことはない。スト期間中被申請人は誰もでてこないし、組合員が被申請人側の者の出入を排除しようとしたこともなく、そのような意図もなかつた。組合員の施設への立入の理由は、一つには会社側の者が誰もでてこないので、車輌等の保全行為をしたのであり、二つにはスト解除の際、直ちに就業できるようにするための待機である、なお、組合員は争議中集合待機する場所を職場以外には持つことができなかつた。そして争議中のこのような立入は、私鉄全般の労組が当然のこととして行つてきていることであり、これにたいして異議のあつた話をきかない。申請人等は正副闘争委員長であつたが、不当な行為を指揮しない。組合から授権された権限を行使しただけである。寝泊りは保全のために三、四人位ずつ交替でやつた。煮炊きは宿泊した者が弁当箱で米を炊いたのにすぎず、平時においても同じことをやつている。ストが長期にわたり、生活が困窮してきたので、数名が袋はりの内職をし、又甘納豆を行商するために出掛ける前に袋ずめをした。前進座員数名が汽車の待時間に三十分位、頼まないのに来てくれて、車庫入口、車輌一台入れるだけの空地で、平服で寸劇とおどりをして、組合員を慰問してくれただけのことである。電話の通話停止が突然にあつたが、顧客の問い合せその他の通話の必要があつたので電話局へ懇願しておいたところ、又突然二、三日開通したが、さらにまた突然停止され争議終了日にいたつた。車輌は特に車庫に入れて閉鎖したのではなく、平時の終業時の慣行に従つたまでである。エンジンスイッチのキーは被申請人から引渡しの要求を受けない。組合は平時に準じて宿直者或はすぐ近くの会社側の者の宅に預けるなどして、非常のばあいの車輌待避に備え、スト解除の際の出勤にそなえ、又毎日一回ずつかけて蓄電池の消耗をふせぎ、車輌の機能を点検し、保全行為に意を用いた。被申請人から車輌移動についての何等の要求を受けない。被申請人からしばしばその不法を警告されたことはない。争議もなかば過ぎて、たまたま来た畑常務が組合員に何か一度だけ言つたらしいが、その直後内容証明郵便が来たほかは、争議が終了するまで何もいつてこない。右内容証明郵便には返事を出しておいたので、それで会社も了解したものと思つていた。

なお以上のことは組合創立後の争議の度毎に行つてきて、被申請人もいまだ一度も異議のなかつたことを慣行的にくりかえしたに過ぎない。

昭和二十八年十二月十六日以降四回に、会社施設不法占拠の責任について団交が為されたが、それ以前には責任云々の問題は全然ない。昭和二十九年二月十一日に組合又は申請人等が不法行為の責任を認めたことはない。そのような無理を通そうとする被申請人の要求をひつこめさせ、平和にすることができるならばと思つて、執行部辞任の問題もでたのであつたが、組合を無力にしようとする意図をもつ被申請人は結局ききいれなかつた。二月十九日の団交は認めるが、組合は協議によりわかつてもらえると思つて尽した。岡幸一は不本意に被申請人に対しいかなる文書をいれたか知らぬが、不法行為の責任などを認めていないはずである。同人は個人的事情によつて辞めたのである。

二、被申請人の、申請理由に対する答弁

申請の理由中被申請人会社の目的事業、本店及び営業所の所在地、申請人等が被申請人会社の従業員を以て組織する組合の組合員であること。申請人等の現在に至るまでの組合に於ての地位。昭和二十八年一月以降組合が被申請人会社とその主張のような争議をしたこと。この争議が地労委のあつせんによつて解決したこと。争議中である昭和二十八年六月三日会社は組合の委員長である申請人根岸に対して、被申請人会社の施設を利用して組合活動をするのは不当であるとして組合員の立退を請求したこと。組合員は右の請求に応じなかつたこと。被申請人会社は昭和二十八年十二月十六日、同二十九年二月一日、同年二月八日、同月十九日の四回に組合と団体交渉をしたこと。右昭和二十九年二月十九日の団体交渉が申請人等の解雇について為されたものであつたこと。同日団体交渉は決裂したこと。被申請人会社は昭和二十九年二月二十四日付で申請人両名を労働協約第八条、第十一条により解雇したこと。申請人両名の家族人員。はいずれも認める。申請人等の資産状況は不知。その余の申請理由は否認する。

被申請人会社と組合との間の労働協約第三一条には「組合が会社の管理する施設の一部又は車輌等を使用する場合は予め文書を以て届出で、会社の許可を受けるものとする、但し使用料は組合に於て実費を支払う。」と定められているに拘らず、ストライキ期間中、申請人根岸は闘争委員長申請人松島は副闘争委員長として組合員を指揮し、ほしいままに被申請人会社の施設である前橋市田中町所在の前橋営業所、同市紅雲町所在の整備工場、伊勢崎市上町所在の伊勢崎営業所、高崎市弓町所在の伊勢崎営業所高崎分所を占拠し、或は組合員を営業所内に寝泊りせしめ、或は煮炊きをなさしめ、或は副業の作業をさせ、或は前橋営業所内に前進座の俳優を引き入れて演劇を実演させ、又被申請人が通話を止めておいた各営業所の電話を勝手に使用し、車輌は車庫に入れて閉鎖し、エンジンスイッチのキーを保持して被申請人側の者には移動不能ならしめる等の暴挙を継続したものである。

よつて被申請人はしばしばその不法を警告したが反省しないので、昭和二十八年六月三十日内容証明郵便を以て立退を請求したが、申請人等は争議行為に属するものと不法の主張をして応じなかつたものである。

争議中の不法不当な行為を免責するには、その趣旨の意思表示をなし協定書にもこの条項を加えることが通例である。然るに本件については昭和二十八年七月十四日付協定書にも、協定成立までの過程においても、この点に関する何等の意思表示もなされていない。従つて協定成立により争議中の不法行為の責任まで免除されるわけはない。申請人等は協定に関する労働良識からくる社会通念であると主張するも全く独断である。又協定成立の際の情況から見れば争議中の不法、不当な行為の責任を免除する趣旨の意思表示があつたとは到底考えられない。

元来当該争議は昭和二十八年四月八日妥結したベースアップの協定に関し、組合が昭和二十七年六月成立した協定を無視して賃金の配分につき不当な主張をなし、遂に昭和二十八年六月十四日からストライキに突入するに至つたものである。被申請人は組合の不当な主張は全然認め難いところであつたが、長期のストを避けるため、改めて組合の主張の一部を容認する提案をしたが、組合はこれを拒否してストを継続した。その後群馬地労委が職権斡旋に出て、双方の主張を折衷した申入書を示して妥結を勧告したが、被申請人は承服できなかつた、同年七月十三日右地労委は更に組合の主張を圧縮した案を示して妥結を勧告したが、被申請人は組合の主張が不当であると確信していたので全く譲歩する意思なく、右勧告も拒否して辞し去らんとしたが委員の熱心なる勧説を拒否し難く十四日払曉提示された条件以外には組合をして何等の要求もなさしめないという言質を得て、交渉の代表者畑、岡芹の両名は社長岩崎の承諾を得るため一旦帰社して社長の承認を得て、提示の条件を受諾する旨右委員会に電話で回答し、同日午前十時頃出頭して協定書に調印したもので、協定書に記載事項以外には全然触れる余裕はなかつたものである。殊に争議中よりことの正否につき意見の対立していた不法占拠の問題は、これに触れることなく後日の解決に譲るの外なき情況であつた。

不法占拠の責任を被申請人より追及したのは、協定成立後五箇月も経過した後ではなく、次に述べるように協定成立直後より問題を提示している。即ち争議解決後非公式に、右の被申請人会社施設不法占拠の責任を明かにするように申請人根岸に申し入れ、特に八月十日の団交の際、岩崎社長から申請人根岸に右不法行為の責任を追求したところ、申請人等は不法でないと主張したので、更に法律的に研究することを要望しておいた。然るにその後申請人等から何等の挨拶もなかつたので、昭和二十八年十二月十六日、同二十九年二月一日、二月八日の三回にわたり団体交渉を持つて、前記不法行為の責任を明かにし今後再びかかる不法行為を行わないことの保証を求めたが、申請人等は右行為は争議行為に属するものと主張して、ごうも反省するところがなかつた。もつとも二月十一日には、右不法行為の責任を認め執行部全員辞任すると申し出たが、如何なる趣旨か解し難く、申請人等の誠意は認められないので、被申請人は組合の最高幹部としての申請人等の責任を問うの外なく、その解雇についての協議のため更に団体交渉を申し入れて、二月十九日被申請人から当時の責任者として組合の執行委員長で斗争委員長であつた申請人根岸、組合の副執行委員長で、副闘争委員長であつた申請人松島、組合の書記長であつた申請外岡幸一の三名を最高責任者として懲戒解雇に付することにつき協議を求めたのである。

右団体交渉に於ては、申請人等は再び申請人等の行為は不法占拠にあらずと主張して譲らず、協議が行詰るや、組合の副委員長は協議は決裂と認めてよいかと発言、被申請人側も決裂と認めることを承認し、人事権を発動することを宣言して団交は終り、この上協議を重ねる余地なきに至つたもので、協議を尽さなかつたものではない。

それで被申請人は右三名に対し懲戒解雇の人事権を発動するの外なきに至つたのであるが、右三名の内申請外岡幸一は自らその責任を認めて、依願退職を申し出たのでこれを容認し、申請人両名に対しては昭和二十九年二月二十四日労働協約第一一条第五号により解雇をしたものである。

労働協約第三一条は争議時と雖も全然効力を失うと解すべきではなく、定められた事項の性質上争議時は拘束力を停止すべきものもあるが、凡てが空白となるものではない。本件の労働協約第三一条の如きは平常時に於ても、争議時に於ても当然なすべきことの規定で、争議時には拘束力を失うような規定ではない。

申請人等に対する解雇は申請人等の正当な組合活動には何等関係なく、申請人等が組合の最高幹部として不法な争議を指示し、指令したその責任を問うたものであつて、労組法第七条第一項の不当労働行為には該当しない。

なお前記スト期間中に組合員が各営業所へ立入つたこと等について申請人等は、車輌の保全行為とスト解除の際の待機であり、寝泊りは保全のため三、四人で、平常と同じであり、副業のため営業所を使用し、演劇は汽車の待時間に寸劇をしたのであり、電話使用は顧客の問合せに応ずるためであり、エンジンスイッチのキー取り外しは非常時の待避に備えたものであると主張するが、これは責任回避のための詭弁である。単なる保全であれば入口に梯子を横たえ机等を並べ看守人を置いて出入を厳重に看視させる必要はなく、他に占拠の目的意図のあつたことは明らかである。被申請人側は出て行かなかつたわけではなく、行つて占有を奪還しようとすれば暴力沙汰でも起る危険性があつたので避けていたのである。営業所の平常宿直は一人宛で、伊勢崎営業所は管理人が常置されて宿直員はない。然るに各所に多数の者が寝泊りしたのは他の目的より為されたものであることは明らかである。ストが長期に亘れば労使とも多大の犠牲を生ずることは当然予期されるところで、生活の困窮を理由に被申請人の施設を擅に占有使用することは許容さるべきではない。前進座の演劇実施には高崎、及び伊勢崎の組合員にも通知し観劇を勧めていて、計画的に実施したことは明らかである。電話は申請人等が組合活動のため殊に争議の指揮連絡のために使用したものである。このことは市外通話が非常に多かつたことによつても明らかである。エンヂンスイッチのキーは平常も取り外さないで置くので、非常時の待避にもそれが最も安全である、取り外して一纒めに保管すると、どのキーがどの車のものかが直ちに判明せず、急速な待避は困難である、現にスト解決後従業員は車の整備にかかつた際、各車のキーを探すのに多大の時間を要した。右の次第で申請人等が争議中被申請人の意思を無視して各営業所を占拠せしめたことは、これを正当とすべき理由なく、不法占拠であることは明白である。

以上のように申請人等に対する解雇は合法有効なもので、被解雇者が職場に出入されることは事業場の秩序を乱されるおそれがあるので、被申請人の到底容認できないところである。

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